頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「君の膵臓をたべたい」を読みました

住野よるさんの「君の膵臓をたべたい」を読みました。

タイトルだけ聞いた時にはちょっと不条理な感じの内容なのかなと想像していたのだけれど、映画の紹介をちらりと見てそうではないと知り、気になっていた本。

先が気になって何だか読み急いでしまった感じ。もったいなかったな。もっとゆっくり丁寧に読んだ方がいいお話だと思う。

呼び名の仕掛け、なるほどな~こういう感覚わかる気がするって思いながら読んだ。呼びかける口調や声音には、相手への気持ちや意識が反映されると思う。

展開が悲しかった。最初の段階からそれはわかっていたことではあるけれど、そこから想像していた以上につらい展開だった。何度か涙出た。

主人公が質問をしたあとの彼女の表情に、涙腺がグッとなった。後半、彼のやりきれない思いにしめつけられた。主人公が「いいですか」と聞く場面の前後で泣けた。

でもラストのシーンは微笑ましく、好きな感じの終わり方。

文体、というか文章の作られ方は少し今っぽいなと感じた。僕視点だから若く描かれているのかもしれないけれど、住野よるさんの作品を読んだのは初めてなのでまだその辺りはよくわからない。また同じ夢をみた、だかそんな風なタイトルの本も気になっているのでそちらも読んでみたい。

あと主人公の名前、勝手に心の中で赤川圭吾って名付けて読んでいた。後半の彼女のセリフで下の名前はこれじゃないなとわかったけれど、名字もやっぱり違ってた(笑)。

「駅物語」を読みました

駅物語 (講談社文庫)

駅物語 (講談社文庫)

朱野帰子さんの「駅物語」を読みました。

舞台は東京駅。配属されたばかりの新入社員が主人公。過去に自分に優しくしてくれた5人を探し出したいと思いながら、日々頑張っている。

駅員として未熟な上に、さまざまなトラブルが降りかかってくるけれど、怒られても凹んでも、めげない。めげないけれど、自信のなさや心の傷もたびたび顔を出す。読んでいくうちに、応援したくなってくる。

同期の駅員や先輩駅員、主人公が探していたひとたちもそれは同じで、弱いところもあれば強いところもあり。彼らが精神的な課題をクリアしていく様子や、主人公と心がふれあう様子が微笑ましい。

ストーリーは、出くわしたトラブルの中心人物がまさに探していたひとだったり、いい感じに展開が進んだり、少しうまくいきすぎかなという感じがしないでもない。でも毎日たくさん出会った中から、探していたひとたちとの再会だけをピックアップしたお話だと思えばいいのかな。そうでないにしても、このお話はこれくらいでいいのかもしれない。駅は奇跡が起きる場所だから。

盛大に感動した訳ではないのだけれど、読み終えてみると、いい話だったなあと満足が残った。面白かった。登場人物たちの性格がわかりやすく、感情移入しやすかったのも楽しめた要因のひとつかな。あと、マンガになってもしっくりきそうな作品だなーと思った。

「満願」を読みました

満願 (新潮文庫)

満願 (新潮文庫)

米澤穂信さんの「満願」を読みました。

ミステリーの短篇集で、6篇の作品が収録されている。このどれもが面白かった。すべて面白いってすごい。

淡々とした文体だけれど、引きつけられて止まらなかった。何か起こる、何か隠されている、そこに疑いがないので先が気になって仕方ない。

どれも後半で一気に謎がクリアになり、展開も意外で気持ちいい。しかし読後には、どの作品もやりきれない気持ちや絶望感が強く残る。主人公たちの先のことを想像してみても、幸福な予感はまったくせず、居心地の悪い感じが残る。でもそこが好き。

中でも「柘榴」「万灯」「夜警」が好みかな。

「ラストレシピ」を読みました

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫)

田中経一さんの「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」を読みました。11月に映画が公開されるようですね。

前半は、何だか読みづらく、なかなか物語に入り込めず。内容がつまらないわけではない。文章がおかしいわけでもない。なのになぜだろうと思って少し考えてみた。行間に余韻がないというか、一文一文があっけないというか、ただただ淡々と事実を告げられていく感じだからなのかもしれないな、と結論づけた。

そして帯をよく見たら、『「料理の鉄人」伝説のディレクター 衝撃のデビュー作!』と書かれていた。TV番組のディレクターさんをしていたひとだから小説を書くことに慣れていないんだ、この淡々とした感じは台本的だもんねと、台本を見たこともないのに納得したのでした。

だからこの作品はあまり楽しめないまま読み終える気がしていたのだけれど、ストーリーが中盤からえらい面白くなり、後半は淡々とした雰囲気もほとんど気にならなくなった。慣れたのかな?(笑)

最後は『読んでよかったー!』と満足。
料理が繋ぐ絆やレシピに隠された謎、時代をまたいで続いていく感情、明かされる新たな事実。面白かった。

でも、とても失礼なことを書きますが、文章の感じがもっと違ったら、もっともっと気持ちが揺さぶられて感動したと思う。喜怒哀楽すべて含まれている物語なのに、あまりそれがダイレクトに伝わってこなかった。いいお話なのに、もったいないなと思ってしまった。

この作品に関しては、映画の方が感動するのかもしれないと思う。二宮くんがいい表情で演じてくれそうだし。しかし映画の公式サイトを見ていたら、少し展開が違うような気配があったのでどうだかわからない。鎌田正太郎って誰よ。

「花の鎖」を読みました

花の鎖 (文春文庫)

花の鎖 (文春文庫)

湊かなえさんの「花の鎖」を読みました。

3人の女性の、それぞれの事情。バラバラに描かれていたそれらが、徐々に繋がってくる。

途中、頭がごちゃごちゃしたので図にして考え、そういうことかと大体の関係性は把握。
普段ミステリーを読むときに、手を止めてまで推理したり考えたりすることはほとんどないので、私にしては珍しい行動。この作品についてはそれを考えているときがとても楽しかった。

そして、それがわかった時が一番楽しかったかもしれない。ストーリーの展開は割と地味に感じたし、衝撃がほとんど無かった。読後感についても、スッキリはしないもののものすごく嫌な気持ちが続くわけでもなく。

湊さんの作品の中では余韻が少なかった方かな。

「リバース」を読みました

リバース (講談社文庫)

リバース (講談社文庫)

湊かなえさんの「リバース」を読みました。


主人公の心に今も残る、3年前の悲しい事故について。あるきっかけでその記憶をたどり直すことになり、新しい事実が見えてくる。

ストーリーは、いつものことながら先が気になる流れで、どんどん読める。謎も多く、ワクワクする。

でもそれとは別に、知っている感覚が何度も出てくるのでそこに反応してしまった。

たとえば、理想の自分の扱われ方と現実との違いに折り合いをつけ、適切な居場所を確保していくあの感じ。

たとえば、親友に関する青臭い感情。自分は親友だと思っていても相手はそうではないと感じたり、親友だとしても一番ではないだろうと思ったり、お互いに思っているのに信じられなかったり。そういう不安や劣等感、若かりし頃に自分も少なからず感じたことがある。

湊かなえさんの作品は、読みやすいのに心に長く残る。それはストーリーの面白さはもちろんだけれど、普段わざわざ思い返したりはしないものの確実に知っている感情が、生々しく描かれていて揺り動かされるからかもしれないなと思った。

展開には驚きも何度かあり、面白かった。でも、最近自分が経験したばかりのできごとの記憶のせいで、最後の直前にそのからくりがわかってしまったのがちょっと残念だったかな。あの経験をしていなかったら、きっとラストですごくびっくりしてその衝撃を楽しめたと思うのに。もったいない!


小説を読む時にはできるだけ内容やあらすじを知らないまま臨みたいので、先輩が書いていたレビューは読まず、妹がドラマ版の話をしたがったのも拒否してました。なのでレビューはこれから読ませてもらい、この週末は妹と会えたらドラマ版の話をするつもりです。こういうのも、楽しみのひとつ。

「MM」を読みました

市川拓司さんの「MM」を読みました。

MM

MM

ネットギャリーでご縁があったので、「MM」を読みました。市川拓司さんと言えば「いま、会いにゆきます」が有名ですが、私は過去に手に入れたまま何年も何年も積んでしまっています。

というわけで、初・市川拓司さん作品でした。

以下、ちょっとした感想。


正直、とても感想が書きづらい作品だった。あまり私には合わなかったということなのかも。

15歳の頃のできごとを、5年後の『僕』が思い返しながら語るかたちで物語が進んでいく。そのせいか、ことばも難しくなくするすると読めた。

イメージしていたよりも青春な小説。『会えなくなるとわかっていても、ぼくはきみを守りたかった‥‥。』というコピーから勝手に、何かすごいことが起こってどうしようもなく切ないことになるんじゃないかと思っていたので、ラストはちょっと物足りなく感じてしまった。すごいことは起こったし、切なさもあったのだけど。

何だかさらさらっと読み終えた感じ。余韻があまり残らない感じ。うれしい気持ちや切ない気持ちがそのまま「うれしい」「切ない」と表現されていたかのような、自分なりの捉え方をする余地がない感じ。

主人公が語る洋画や洋楽の知識もまったくなく、そこでも共感できなかった。与えられたものをただただ読んだ、そんな気持ちになった作品だった。

思うに、この作品の素敵さを感じ取れるピュアさが私には欠けているのだろう。仕方ない!