頭の中のあかない引き出し

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「ラバー・ソウル」を読みました

ラバー・ソウル (講談社文庫)

ラバー・ソウル (講談社文庫)

井上夢人さんの「ラバー・ソウル」を読みました。

とても厚い本。678ページ。物語は、登場人物たちそれぞれの語りと、主人公視点の文章とで進んで行く。

井上夢人さんの作品は、どれも読みやすくて入りやすい。この作品も例に漏れず、どんどん読めた。ただ、前のパートで既に出てきたような説明の文章が後のパートでも何度か出てくるので、途中、少し冗長に感じてしまった。この分、本が分厚くなってしまったのでは? とも思った。

最後はどう着地するんだろうかと、漠然とした展開をいくつか思い浮かべつつ読んでいた。しかしどれとも違う結末。読後は哀しさや安堵感ややりきれなさ、腹立たしさ、切なさ、いろんな感情が頭を占めた。

ラストは、あの方のあの作品と少し近いかなと思った。展開というか、動機や心持ちみたいな部分が。

仕掛けについては最後までわからなかった。途中でわかるような仕掛けではなかったけども。でもごまかされていた部分は、ここはどうやったんだろう?と思ってはいた。

他のことは、書くと何だかどれも核心に触れてしまう気がするので、内容についてはここまででおしまい。何も知らずに読んだ方が、心に響いて余韻が残る作品ではないかと思う。


「うまれる」の表記が「生れる」なのが気になった。間違いではないみたいだけど、「生まれる」で慣れているので「生れる」が出てくるたびに目に飛び込んできて。気が散ってしまった。

他には「ゆれる」が「搖れる」だったり、「つかむ」が「摑む」だったり、「つながる」が「繫がる」だったり、難しい方の漢字を選んでいるのかなーと思った。いつもそうだったかは思い出せない。今作だけだとしたら、何か意図があるのかな?

あと帯! 帯に文句つけたい。あれはもはやネタバレに近い。バラしてはいないけれど、物語の方向性をあんなに盛大に発表して欲しくない。読まないようにしても字が大きくて目に入ってしまうし。販促として効果があるのはわかるけれど、読後の衝撃や感動をかなり奪っていると思う。そのうち読むかもしれないダンナさんのために、帯は外しておいてあげたぜ!

裏表紙のあらすじは、読了後に読んでみたらネタバレまったくされていなかった。これを書いたひとは本当はもっといろいろ言いたかっただろうな苦労しただろうな、と労いの気持ちでいっぱいになってしまった。勝手に(笑)。