頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「オジいサン」を読みました

京極夏彦さんの「オジいサン」を読みました。

面白かったー。72歳の益子徳一さんの日常。7日間のできごと。

日常も日常。ほとんど何も起こらない。せいぜいが数日前のことを頑張って思い出してみたり、近所の人と話したり、自分のお昼を作ったりするくらい。でも面白くて、飽きずにずっと読めちゃう。

日常をこなす徳一さんの心の動きが、よーくわかって楽しいんだよね。脳内のつぶやきやセルフツッコミ、展開しすぎてたまに哲学っぽくなる自分への分析。時間についての考察はしみじみ納得した。

読むうち、徳一さんにどんどん親近感が湧いてくる。年齢のせいか少し忘れっぽかったり、考えがループしちゃったり、最新の機械に疎くて間違った確信を持っていたりするんだけど、そういうところがすべて愛らしく思えた。

ラストもとても良かった。涙が出ちゃうくらい。

私の年齢は、先日挫折した「麦本三歩の好きなもの」の三歩ちゃんと、徳一さんのちょうど真ん中くらい。でも感覚的な年齢で言うと徳一さんの方に近いんだろうなあ。言ってることがしっくりきた(笑)。

「麦本三歩の好きなもの 第一集」を読みきれませんでした

住野よるさんの「麦本三歩の好きなもの」を読みました。

が、途中でやめてしまいました。

三歩ちゃんのセリフが、ちょっとどうにも受け入れられなかった。「へぁいっ」「……ぬ」「ぐふっ」「ぬぇ?」というのを口に出して言われるたびに、読みながら眉間に力が入ってしまう。心の中の言い回しや表現も、読者を意識して大げさに書かれたブログを読んでいるみたいで、徐々に苦痛になってしまい。

何も大きなことが起こらない日常、そういうお話は好きなんだけど、これは合わなかったなあ。

大人気シリーズで続編も出ていて、読んだ人たちはとても癒やされているようなのに、まさか読みきれないとは。今の私の心が荒んでいるおそれもあるので、いずれまたチャレンジしてみようと思います。

 

あと、むぎもとみほ かと思っていたら むぎもとさんぽ だったのでビックリした。

「屋上のテロリスト」を読みました

知念実希人さんの「屋上のテロリスト」を読みました。

ポツダム宣言後、現実とは違った歴史を辿った日本のお話。

主人公は高校生の沙希と彰人。お互いに「君は〜」と呼び合うのが違和感あった。知り合ったばかりの関係だからかな? 自分が高校生の頃で考えると、「君」って呼ぶことは絶対になかったんだけど、今はそうでもないのかな。

『テロリスト』って比喩かなと思っていたらそうでもなく、予想よりもかなりスケールが大きなお話だった。大事そうな伏線が途中でふたつわかってしまったこともあり、最初ちょっと気持ちが冷めてしまった。

でもそういったことも気にならなくなるくらい、後半はハラハラして面白かった。

いい形のラスト。その後の皆の様子を知りたいなーと、贅沢なことを思ってしまった。

帯に「あなたは100回騙される」とあったけれど、そこまでではなかった。いつも帯こそに騙されてしまうよ。

「N」を読みました

道尾秀介さんの「N」を読みました。

章は6つ。これをどこから読んでも良いんだって! 各章の冒頭部分が最初に載っていて、そこを参考に自由に順番を決められる。読む人によって色が変わる物語にしたかったとか。何そのワクワク仕様。シビれる。

しかも、1章ごとに印刷が逆さまになってるの。章と章の物理的なつながりをなくすためらしい。そこまでしなくても大丈夫なのでは?と最初は思ったのだけれど、逆さまにしたり戻したりするうちに、不思議と読んだ感覚がリセットされて次が新鮮に読めた。すごい。ついでに言えば、逆さま状態の時にしおりを下から上に挟むのが特別感あって楽しかった(笑)。

私は、6、1、4、5、2、3の順で読んでみた。フィーリングで選んだ。

ひとつひとつは、連作短編の中のパーツのような感じ。ある章の登場人物が別の章でも関わってくることがあるので、ここでのこの人があの時こうだった人なのか〜などと理解が深まり楽しめる。
どこから読んでもいいというだけあって、徐々に結末に向かっていく感じではない。ある街に関係する人々の、ある出来事やその後の様子。

自分の人生の中に、誰かの死が大きく横たわってしまっている人がどの章にも出てきた。周りも含め、あまり幸せな人がいない印象。

そういった人々が、自分の意図しないところで人を救うこともあれば、人を傷つけることもある。奇跡のような瞬間がきっかけで変われそうな人もいれば、そんな瞬間があることすら気付かず絶望状態のままの人もいる。みんなが救われて終わるわけではないのが良かった。

この本は、たしかに読む人によって色が変わると思った。もしもこの章の後にこっちを読んでいたらどう感じただろうかなどとあれこれ想像した。面白い。
忘れた頃にまた読みたい。もちろん違う順番で!

「リアルフェイス」を読みました

知念実希人さんの「リアルフェイス」を読みました。

知念さん、初読み。Twitterではよくお見かけするので、どんな作品を書くのかなーと気になって。

面白かった。お医者様の書くものだから難しいのかなと思ったらそんなことはなく、専門的な用語は出てくるものの、表現もわかりやすくてするする読めた。

柊先生は、気がつけば若い頃の三上博史さんのイメージで読んでいたなあ。

一章〜三章が単なるエピソードで終わらず、四章にも関わってきて嬉しくなった。幕間が不穏な雰囲気を醸し出していて、続きを早く知りたい気持ちが盛り立てられた。

後半、ちょっと予想がついちゃった部分もあったけれど、意外な展開もあったし、終わり方もよかった。

好きなテイストだったので、ほかの作品も読んでみたい。


356ページ 5行目
名前だだ → 名前だ

「ファントム・ピークス」を読みました

北林一光さんの「ファントム・ピークス」を読みました。

ダブルカバー。内側の方が好きだなあ。

山で起きる、不思議で恐ろしい事件。何の仕業でこんなことに?、と気になってどんどん読める。ホラーっぽいのかなと思っていたけれど、霊的な怖さではなかった。

でも怖い! 惨殺され具合がエグイんだもん。淡々としているようで描写はこまかいので、割と冷静に想像して『うえー』と思ってしまった。

人間のやることが後手後手になってしまう感じ、リアルだなと思った。最後の種明かし、面白かった。ちょっと不安要素残るところも好き。映像で見たら楽しそうだなと思った。

周平のセリフで、「おれの家に泊まりたまえ」というのはちょっと古くさく感じたな。48歳くらいだと思うけど、「〜〜たまえ」ってなかなか言わないよね。

「往復書簡」を読みました

湊かなえさんの「往復書簡」を読みました。

長編かと思っていたら、違った。100ページほどのお話が3つと、8ページの締めくくり的なお話がひとつ。

最初の「十年後の卒業文集」は、それほど楽しめなかった。あまり入り込めないまま読み終えてしまった。湊かなえさんの作品ということで、何かとんでもない方向に行くのではないかと期待し過ぎたのかも。

同じく「十五年後の補修」も、何となくまったりと読み終えてしまった感じ。

「二十年後の宿題」は、6人のその後や当時の状況、先生のことも気になり、引き込まれた。徐々に事実がわかり、面白かった。これが一番よかったかな。事故の内容がつらすぎたけど…。

最後の8ページのお話は、連作にするために無理やり作ったような印象を受けてしまった。しかも最初のお話との繋がりはないように思えて、読み返したもののほんのりとした共通点しか見当たらず、スッキリしないまま読了。

あとは、書簡形式だからかどのお話もちょっとまだるっこしく感じた。どうしても、説明っぽいところが多い気がしたし。