頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「夜が明ける」を読みました

NetGalleyで、10/20発売予定 西加奈子さんの「夜が明ける」を読みました。

重い作品。楽しくはない。でもとても大切なことをいくつも言われたように感じたし、それはずっと心に残っていくと思う。

高校で出会った「俺」と 、異形とも言うべき風貌の「アキ(深沢暁)」。高校生活のエピソードと、それぞれのその後。

前編はまだ明るさがあった。青春っぽさもあり、それぞれ夢もあった。

後編ではそれが一変する。居場所を見つけたはずの「アキ」にはつらい変化が待っていたし、人並みの生活が送れていた「俺」も、そうではなくなっていく。金銭的な苦労がつきまとい、仕事では、考えられない過労働に加えて理不尽すぎる扱い。

生活や心が徐々に壊れていく様子がこまかく描かれている。彼らだけでなく、ここに出てくる人たちはみんな、前向きな人もそうでない人も、とてつもなく辛い思いをしている。読み進めるのがつらく感じることすらあった。

フィクションではあるけれど、現実味がある。心情の描写がリアルで、こういう思いをしている人は本当にいるだろうと感じた。加えて、実在の映画や俳優、現実に起きた事件を想起させるニュースなどが登場してくるから、余計に現実味が増しているのかもしれない。

周りがみんな敵のように思えて、誰にも弱音を吐けなくて、苦しくて上手く生きて行かれなくなる人は、実際にたくさんいるんだろうと思った。それでも、よく目を凝らせば、優しい人や手を差し伸べてくれる人が近くに必ずいると思いたい。

「苦しかったら、助けを求めろ」というセリフは、西加奈子さん自身の叫びのように思えたし、現実の社会で苦しんでいる人たちにも伝えたい思いなんじゃないかと感じた。

いま普通に暮らせている私自身も、少し環境が変わるだけで「俺」になり得る。「俺」が名前で書かれないのは、誰もがそうなるおそれがあるってことなのかもしれない。

ラストシーンの後はどうなったのか。展望は明るくないような気がするけれど、抗い続ける人がいるのは救いだなと思った。


その他、ちょっとした感想。

□アキ・マケライネンは調べちゃう。
□『ほとんど〜〜だった』という表現が多く感じた。
226ページ
紙ナプキンだった鼻をかむのも→紙ナプキンだった。鼻をかむのも