頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

東京セブンローズ(上・下)

東京セブンローズ〈上〉
井上 ひさし

おすすめ平均
本当に大切なもの
おもしろい!かつ勉強になります
日本語の素晴らしさを再認識

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東京セブンローズ〈下〉
井上 ひさし

第2次世界大戦の頃のお話。 昭和20年の4月からスタートします。 日記調で物語が進むんだけど、漢字が当時の字体で書かれているのでけっこう難しい。 読むのにちょっと苦労するかも。 でもね、たとえば、「臺」という漢字だけ出てきたらなんじゃこりゃぁって感じだけど、文章の流れで「臺所」「番臺」と出てくれば今でいう「台」だなって理解できる。 想像力を駆使すれば意外とスムーズに読めちゃいます。 団扇屋の主人(といっても戦時中だから休業中)の、日々のできごとや感じたことが詳細に綴られてるんだ。 これが面白い。 戦争のことって、歴史の教科書で習った程度しか知らなかったんだ。 『日本は負けた』とか『原爆が落ちた』とか『たくさんの人が亡くなった』とか、そういう情報は知ってる。 でも当時の人々がどんな生活をしていたのかって詳しく知らない。 この本を読むと、それがわかるから面白い。 東京下町に住む庶民が戦争中にどんな生活をしてどんなことを思っていたのか、手にとるように想像できる。 娘が結婚したり、闇でイイモノを手に入れたり、団扇を作れないから運送業を始めたり。 町会長に嫌味を言われたり、こっそりすき焼きしたり、お風呂に入るのにも苦労したり、、、、。 たしかに、毎日空襲警報が鳴ったりしておそろしい時代だったと思うし、この一家だって警報の度に怖い思いをしてる。 でも、そういうことばっかりじゃないんだよね。 人々は、日によってはトイレの汲み取りがしてもらえないことに心を悩ませたりもしてるんだ。 当然といえば当然なんだけど、意外だった。 それからやっぱり皇室に対しての敬意はすごくって、日記の中でも特別丁寧な言葉で表されてる。 そういう時代だったんだなぁって、改めて思ったよ。 『戦争の記録』といっても決して重々しい感じではないし、『物語』として楽しめる内容。 大きな事件も起こるけど、何よりも日常の描写がすごいって思ったよ。 日記と聞くと躊躇しちゃうかもしれないけど、ぜんぜん単調じゃなくて毎日何かが起こってる。 小さいことも含めてね。 かと言って”出来事の羅列”だけじゃない。 後半(敗戦後)は、日本語のローマ字化計画たるものが持ち上がるの。 主人公(日本語大好き)は、この計画に猛反対。中止させようと戦うんだ。 その合間には、いかにも父親らしいことで悩んだりもするんだけど。 この本は、オススメですよ〜。 ちなみに、この小説のタイトルである「東京セブンローズ」は 下巻も半ばになってようやく意味がわかります。