頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

ポプラの秋

ポプラの秋 (新潮文庫)

ポプラの秋 (新潮文庫)

ポプラ荘に住んでいた頃の大家さんが亡くなった。
そんな知らせで物語は幕を開けます。

主人公の「千秋」は当時7歳。
父が亡くなったばかりで、母は傷心中。
幼いながらにあれこれ考え、体調を崩してしまう千秋。
その後、なりゆきから、大家のおばあさんの部屋に通うようになるのです。
成長した女性が過去を振り返る形で描かれています。
文体こそ大人のものだけれど、視線は子供そのもの。
感じたことや考えたこと、父への想いがまっすぐに伝わってくる気がしました。

亡き父に宛てて書いていた手紙が途中何回か挿入されるのですが、これが何と言うか、胸に沁みるんです。
父に思いを馳せ、死について考える。
感じたままを書いた手紙。
グッときたり涙が出たりというのとは少し違って、静かだけれど心に響くという感じでした。

おばあさんとのやり取りも良かったなぁ。
ぷぷっと笑っちゃう場面があったりして。

そして、お葬式のシーンや最後の展開も好きです。
あの時間は、ちゃんと今の千秋に影響を及ぼした。
母の想いも伝わった。
こういう雰囲気は、とても好み。
この人の作品は初めて読んだのだけど、けっこう好きかもしれないなー。
難しすぎる言葉は使わずに、ちゃんと情景を思い浮かばせてくれる。
他のも読んでみたいです。