頭の中のあかない引き出し

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「残像に口紅を」を読みました

筒井康隆さんの「残像に口紅を」を読みました。

 

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

 

世の中から少しずつ文字が消えて行く中で小説を書いていくとどうなるのか、というお話。

楽しかった。ストーリーがどうとかよりも、やっていることが変わっているのでワクワクした。少しずつ文字が消えると使える文字も減って、周りの様子や主人公の心持ちも変わってゆく。

主人公がその小説を書いているけれど主人公自身もその世界を体感していて、文字が消えればその影響を受けていくし、余計な記述が飛べば主人公的には現実と思っている部分も飛ぶのが面白かった。

ある程度までは意外と普通に読める文章が続いていて、でもこれはちゃんと、消えた文字を使わないで表現されているんだなと思うと何だか感動した。

中盤から後半にかけては、少し飽きてしまった。第三部は怒涛の文字減少。文章もそれに合わせて読みづらくはなったけれど、何となく意味は伝わった。

消えた文字は脳裏からもなくなるから、主人公はそれを使わないで執筆すればいいだろうけれど、筒井さんの頭の中では消えた文字が消えていないわけだから、使わないようにして執筆するのは大変だっただろうなと思った。
でも解説(というか分析)を読んだら、消えたあとなのに使われてしまった文字がいくつかあったみたい。でもこの試みがすごいなあと思ったし楽しめたし、それは別に気にならないかな(笑)。