頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「N」を読みました

道尾秀介さんの「N」を読みました。

章は6つ。これをどこから読んでも良いんだって! 各章の冒頭部分が最初に載っていて、そこを参考に自由に順番を決められる。読む人によって色が変わる物語にしたかったとか。何そのワクワク仕様。シビれる。

しかも、1章ごとに印刷が逆さまになってるの。章と章の物理的なつながりをなくすためらしい。そこまでしなくても大丈夫なのでは?と最初は思ったのだけれど、逆さまにしたり戻したりするうちに、不思議と読んだ感覚がリセットされて次が新鮮に読めた。すごい。ついでに言えば、逆さま状態の時にしおりを下から上に挟むのが特別感あって楽しかった(笑)。

私は、6、1、4、5、2、3の順で読んでみた。フィーリングで選んだ。

ひとつひとつは、連作短編の中のパーツのような感じ。ある章の登場人物が別の章でも関わってくることがあるので、ここでのこの人があの時こうだった人なのか〜などと理解が深まり楽しめる。
どこから読んでもいいというだけあって、徐々に結末に向かっていく感じではない。ある街に関係する人々の、ある出来事やその後の様子。

自分の人生の中に、誰かの死が大きく横たわってしまっている人がどの章にも出てきた。周りも含め、あまり幸せな人がいない印象。

そういった人々が、自分の意図しないところで人を救うこともあれば、人を傷つけることもある。奇跡のような瞬間がきっかけで変われそうな人もいれば、そんな瞬間があることすら気付かず絶望状態のままの人もいる。みんなが救われて終わるわけではないのが良かった。

この本は、たしかに読む人によって色が変わると思った。もしもこの章の後にこっちを読んでいたらどう感じただろうかなどとあれこれ想像した。面白い。
忘れた頃にまた読みたい。もちろん違う順番で!