頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「新世界より(下)」を読みました

貴志祐介さんの「新世界より(下)」を読みました。

面白かった…!

下巻も本当にハラハラドキドキで。主人公たち、ピンチに陥り過ぎだし四面楚歌になり過ぎだし九死に一生を得過ぎだった。何度も『もうこんなの無理でしょ』と思ったけれど、この物語自体が主人公「早季」の手記として書かれているものなので、『ってことは少なくとも早季は生き残るんだろう』というところを心の拠り所にして何とか心の平静を保ちつつ読んだ。しかし一方では、思い返して記述するという手記の性質から、途中途中で少し先のピンチを予告するような記述が出てくる。そのたびに『この上まだ危機が!?』と戦々恐々としてしまった。

後半、怒涛の展開。最後の作戦は、まさかと思った。内容を切り札の相手に伝えるのに、躊躇は無かったんだろうか。私なら言えないし、やれない。覚悟の決まった者同士だからこそ成り立つ作戦だったのは理解できるけれど、それにしてもすごいなと思った。

驚かされたのは、悪鬼の秘密やバケネズミの正体。なんて罪深いんだろう。愕然としてしまった。

失ったものがあまりにも多くて、喪失感がすごい。それでも、変化の兆しは見えているし、変わろうとする人がいる限り期待は持っていいのかなと思った。

上中下、合わせて約1450ページ。かなりの長編だけれど、飽きることなく最後まで楽しめた。すっごく面白かった。

 

492ページ ルビ
あびきゅうかん→あびきょうかん

「新世界より(中)」を読みました

貴志祐介さんの「新世界より(中)」を読みました。

主人公たちには次々とピンチが降りかかってきて、これ最後まで無事に行かれるの?と、ハラハラが止まらない。

そして世界の仕組みが少しずつ見えてきて、そのおそろしさに戦慄する。

まだわからない部分も多くて、それでいていろいろ話は進んでいるので、とにかく先が気になる!

上下とか上中下とかになっている作品だと、(上)や(中)は大抵、気になるところで終わってしまう。続きが知りたいし、早く先が読みたくなる。

というわけで、感想が疎かになりがちです(笑)。

「新世界より(上)」を読みました

貴志祐介さんの「新世界より(上)」を読みました。

1000年後の日本が描かれている。人間は呪力が使えるし、動物たちもいろいろと進化している。1000年前(こちらでの現代)の面影をあちこちに少しずつ残してはいるものの、かなり多くのことが変わってしまっているのがわかる。

トラバサミ、ミノシロ、ミノシロモドキ、バケネズミといった生物たちの生態、搬球という競技のトーナメント、呪力の発生と広がりの歴史、などが詳細に記されていて、まるで本当に見てきたみたい。

ハリー・ポッター十二国記のような、しっかりと作られた世界を感じた。こういうの、けっこう好きなんだよね。

前半でこの世界の枠組みに取り込まれ、後半は主人公たちのピンチにハラハラドキドキ。

上巻を我慢して読めば中と下はすっごく面白いと聞いたので、この先かなり楽しみだな!上巻を我慢して読めば中と下はすっごく面白いと聞いたんだけど、上巻もそれほど苦痛はなく読めた。この先かなり楽しみだな!

「私が見た未来 完全版」を読みました

たつき諒さんの「私が見た未来 完全版」を読みました。

3.11の大震災を夢で予知したと言われている漫画家さん。99年に発行され絶版になっていた「私が見た未来」の完全版が出るということで、飛びついた。

予知夢編、ミステリー漫画編の二部構成。第一部は、夢で見た予知や夢日記について。第二部は、過去の作品9編。

私は夢にとても興味があって夢日記もつけているので、第一部は本当に興味深く食い入るように読んだ。こんなに予知夢を見ていてすごい!

夢日記にイラストがたくさん使われていて、絵心のない私にはうらやましかった。私は文字でほぼ全部書くから内容が大作だととても時間がかかるし、文章だと説明しづらいこともある。絵が描けたらなあ、と改めて思った。

マンガの中でたつきさんが、「こういう予知夢を見るのは私だけではないと思う ただ覚えていないだけで皆 見てると思うな」と言っている。

私も過去に、なくしてしまったノートを気に病んで寝たらそのありかが夢に出てきて実際にそこから見つかったり、興味のないミュージシャンが夢に出てきて気になり始めたと思った矢先、その人が未成年女性に暴行したとTVで見たり、…というようなことがあった。ほかにも、夢で見たことと何となく一致することを翌日にTVで見かける、というのはよくある感じがする。

たつきさんの予知夢のパターンは、夢を見た日から○年後の同じ月日、というのが多かったので、試しに自分の夢日記を少し見てみた。

すると、祖母が亡くなる7年前の同じ日に、祖母が亡くなる夢をみていた。

それと、2003年には『関西で何か大変なことが起こって人がたくさん死んでしまい、それを加藤茶さんがメールで知らせてくれた』という夢をみていた。読んでいて志村けんさんが思い浮かんだので調べてみたら、17年後の同じ日に亡くなってた。だいぶ象徴的だけど、これも予知夢に入りますか??

○年後の同じ日パターン、私にもあるかもと思うと面白い。ほかにもあるか、ちゃんと読み返してみたいな。

そんなわけで、第一部はとても参考になったし、内容もすーごく面白かった。

その勢いで第二部も全部読んでしまったけど、こわかったーーー! 苦手なんですよホラーとかオカルト! 小説なら大丈夫なんだけど、漫画とか映像は苦手。ストーリーは面白かったからどんどん読んでしまったものの、今日もまだ思い返してはこわがってる。

「涙香迷宮」を読みました

竹本健治さんの「涙香迷宮」を読みました。

うーん。全体の3分の1ほど進むまで全然面白いと思えなくて、途中でやめようか悩んだくらい。いろはが出てきたあたりから少しずつは楽しめたのだけれど。

帯にやられてしまった感はある。だって、「空前絶後の謎解き!」「このミス2017 第1位!!」「ミステリが読みたい! 2017 第2位」「第17回 本格ミステリ大賞 受賞」「第40回 週刊文春ミステリーベスト10 第3位」と書かれているし、「綾辻行人恩田陸京極夏彦氏 絶賛!」とまで言われたら期待しない方が無理だよねーー。

いやでもよく考えれば、帯は合っている。すごいとか本格とかは言っているけど、面白いとは言ってないもん。確かにすごかったから、間違ってない。

「いろは」の数がまずすごい。これを全部考えたのかと思うと驚いてしまう。そして、その暗号もすごい。「聯珠」の暗号も、聯珠のことはわからないけれどすごいということはわかった。

智久の謎の解きっぷりはスムーズで、どんどん解明されていくので気持ちがいい。ただ、物語に没頭できていないのに話が進んでしまうような感覚があって、謎が出てきては解かれていくのを何となく追いかけているうちにラストを迎えた、という感じ。

「いろは」は本当にすごいと思ったけれど、お話としてはそれほど楽しめなかったな。

「夜が明ける」を読みました

NetGalleyで、10/20発売予定 西加奈子さんの「夜が明ける」を読みました。

重い作品。楽しくはない。でもとても大切なことをいくつも言われたように感じたし、それはずっと心に残っていくと思う。

高校で出会った「俺」と 、異形とも言うべき風貌の「アキ(深沢暁)」。高校生活のエピソードと、それぞれのその後。

前編はまだ明るさがあった。青春っぽさもあり、それぞれ夢もあった。

後編ではそれが一変する。居場所を見つけたはずの「アキ」にはつらい変化が待っていたし、人並みの生活が送れていた「俺」も、そうではなくなっていく。金銭的な苦労がつきまとい、仕事では、考えられない過労働に加えて理不尽すぎる扱い。

生活や心が徐々に壊れていく様子がこまかく描かれている。彼らだけでなく、ここに出てくる人たちはみんな、前向きな人もそうでない人も、とてつもなく辛い思いをしている。読み進めるのがつらく感じることすらあった。

フィクションではあるけれど、現実味がある。心情の描写がリアルで、こういう思いをしている人は本当にいるだろうと感じた。加えて、実在の映画や俳優、現実に起きた事件を想起させるニュースなどが登場してくるから、余計に現実味が増しているのかもしれない。

周りがみんな敵のように思えて、誰にも弱音を吐けなくて、苦しくて上手く生きて行かれなくなる人は、実際にたくさんいるんだろうと思った。それでも、よく目を凝らせば、優しい人や手を差し伸べてくれる人が近くに必ずいると思いたい。

「苦しかったら、助けを求めろ」というセリフは、西加奈子さん自身の叫びのように思えたし、現実の社会で苦しんでいる人たちにも伝えたい思いなんじゃないかと感じた。

いま普通に暮らせている私自身も、少し環境が変わるだけで「俺」になり得る。「俺」が名前で書かれないのは、誰もがそうなるおそれがあるってことなのかもしれない。

ラストシーンの後はどうなったのか。展望は明るくないような気がするけれど、抗い続ける人がいるのは救いだなと思った。


その他、ちょっとした感想。

□アキ・マケライネンは調べちゃう。
□『ほとんど〜〜だった』という表現が多く感じた。
226ページ
紙ナプキンだった鼻をかむのも→紙ナプキンだった。鼻をかむのも

「自薦THEどんでん返し」を読みました

アンソロジー「自薦THEどんでん返し」を読みました。

どんでん返しがあるお話は好みだし、自薦というのも気になったので楽しみに読んだ。

 

綾辻行人「再生」

おっとそうだったの?という面白さ。この後どうなったんだろうと想像すると、怖いんだけどちょっとニヤニヤしてしまう。

 

有栖川有栖「書く機械 ライティング・マシン」

読みやすかったけれど、どんでん返しっぷりはそうでもなかったかな。

 

西澤保彦「アリバイ・ジ・アンビバレンス」

この作品も難しい名字がいろいろ出てきたなー。谷谷谷谷(たにかべやつや)とか刀根館(とねだち)とか。

ほとんど会話の中での推理だけで動機を導き出せるのすごい。なるほどなーと思える結末だった。

 

貫井徳郎「蝶番の問題」

手記のところから謎解きの部分が面白かった。終わり方はちょっと気が抜けちゃった。

 

法月綸太郎カニバリズム小論」

カニバリズムについて語っているパートは少し読みづらかったけれど、展開は面白かった。

こどもが小さい頃に「生首に聞いてみろ」を読んだけれど、途中で読書スイッチ切れてそのままになっている。今なら最後まで読めるかな。

 

東川篤哉「藤枝邸の完全なる密室」

語り口が軽くて読みやすい。セリフのチョイスや探偵とのやり取りがちょっととぼけてて楽しめた。

気になる展開に、わかりやすく気持ちいいオチ。短い作品なのに満足感あった。

 

76ページ

頭に中に→頭の中に