頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「うつくしが丘の不幸の家」を読みました

町田そのこさんの「うつくしが丘の不幸の家」を読みました。

「おわりの家」「ままごとの家」「さなぎの家」「夢喰いの家」「しあわせの家」、の5篇。

うつくしが丘という住宅地に建つ、とある家が舞台。この家に住むと必ず不幸になって出て行くことになる。「不幸の家」と呼ばれているらしい。

お話ごとに住人は違うのだけれど、その誰もがこれはキツイなあという状況にあり、イライラしたり、気持ちが倦んでいたり、どこかで人生を間違えたと感じたりしている。

でもそれが、何かで大きく変わることもある。見方ひとつで相手への感情が真逆になったり、誰かの言動がきっかけになって事態が驚くほど好転したり。

不幸も幸せも「不幸の家」も絶対的なものではなくて、誰が何を見て何を思うかにもよるのかも。

どのお話でも家が自然に関わっていて、ストーリーに馴染んでた。最初の話はちょっと都合よく展開したように感じたけども。

物語は時系列が逆になっていて、章ごとに前の住人へと話が遡っていく。読んでいると、さっきの話のあれはこの時のこれなのねーというのが見えて面白い。普通に時間順になっているよりずっといいなと思った。

グッときちゃう部分もあったし、各章のラストも良かった。エピローグのラストも嬉しくなる。読後もしばらく、住人たちのその後を想像して楽しめた。

信子さんの言ってた「あの子」が、あの子のことだといいなと思った。根拠は薄いけど。

「天使の屍」を読みました

貫井徳郎さんの「天使の屍」を読みました。

中学2年生の息子「優馬」が、ある日突然、何の前触れもなく自殺してしまう。原因に心当たりがない父親の「青木」は、悲しみに暮れながらも、理由を知るため動き始める。

初っ端から優馬が自殺してしまうのが衝撃。少しいつもと様子が違うだけだったのに、まさか自殺してしまうなんて。ムニエルどうするのよ。親としては、考えたくもないできごと。本当の理由を知りたいという動機がなかったら、青木もずっと動けなくなったんじゃないだろうか。

自殺は優馬だけで終わらず、続いてしまう。同じくらいの子がいるので、読んでいて気が滅入ってしまった。途中、なかなか読み進められなかったくらい。

最後に判明する真相には驚かされた。そんなことあり得るの!?
でも何だか、そういうことが起こっても今の時代ならあり得るかもと思ってしまった。
物語としてはとても面白かったけれど、こんなこと実際には起きないでね、と思った。

「隠居すごろく」を読みました

西條奈加さんの「隠居すごろく」を読みました。

糸問屋「嶋屋」の6代目主人を引退し、隠居生活を始めた徳兵衛。商いを離れ穏やかな日々を送るはずが、孫の千代太(8歳)がやってきては厄介事を持ち込み、心も体も休まらない。

徳兵衛は割と頑固ですぐ怒鳴り散らすし、千代太もこうと決めたら折れない上にしつこい。それぞれ心が優しいことはわかるのだけれど、しばらくはどちらにもイマイチ感情移入できずに読んでいたかな。

でもその後は少しずつふたりの関係がしっくりしてくるし、登場人物も増えて状況もどんどん変化してくるので楽しめた。

300ページが近くなった頃からは、それまで以上にめまぐるしく展開が動くので目が離せない。

徳兵衛は千代太と関わるうちに心情や言動に変化が起きて、価値観すら変わってくる。その様子や人との関係にグッときちゃって、涙腺を何度も刺激されてしまった。

456ページと少し長めの本だけど、その分、徳兵衛たちの歩んできた道が心に沁み渡って読後は胸がいっぱいに。徳兵衛の第二の人生を一緒に体験したような満足感。面白かった。

余韻に浸っていたら、急に犬のこと思い出した。シロどうなったんだっけ?(笑)

「追憶の夜想曲」を読みました

中山七里さんの「追憶の夜想曲ノクターン)」を読みました。

御子柴礼司シリーズ2作目。

なんかねー。このシリーズやっぱり好きだな。淡々としているのに引き込まれる。

後半になっても御子柴はずっと冷静だけれど、ストーリーはかなり大きく動いてくるので読みながらドキドキした。
後半にわかってくる事実はどれも意外。結末は予想よりもっとダークだった。

どんな人でも、人に見せている顔だけが真の姿じゃないよなあとしみじみ思ってしまった。面白かった。

シリーズはまだ続いているようなのに、御子柴は今後どうなるのー?どうやって続くのー?って状況で終わっていて、先が気になりすぎる。

「六人の嘘つきな大学生」を読みました

浅倉秋成さんの「六人の嘘つきな大学生」を読みました。

スピアリンクスという、今をときめく会社の就職試験。5千人以上の中から選ばれた6人が臨むことになるのは、最終選考だというのにグループディスカッションだった。
これがまさかの内容で、ディスカッション中にとんでもない事態になってくる。

誰の仕業なのかという犯人探しと、このディスカッションがこれからどうなっていくんだろうというハラハラ感。そして、数年を経てのインタビューが挟まれつつ進むので、その姿から犯人を予想したり聞き手をイメージしたりする楽しさもあった。

伏線がたくさんあったけれど、ところどころ、少し不自然に感じる描写があった。唐突なので『これは何だろ?後で関係して来るのかな?』『伏線かな?』と察しがついてしまった。

でも、犯人についての予想は何度も覆されて、面白かった。根っからの悪人はなかなかいないと思うけど、本当の善人もなかなかいないよね。腹黒でもいいじゃない。にんげんだもの

「残月記」を読みました

小田雅久仁さんの「残月記」を読みました。

「そして月がふりかえる」、「月景石」、「残月記」の3篇。

【そして月がふりかえる】
ある時点から、自分が自分の認識する自分ではなくなってしまうという恐怖。
自分がいつも通りの自分として生きていられるのは、他者からもそのように認められるってことも重要なんだな。自分は何も変わっていないのに、周りの認識次第でこんなことになってしまうとは。こわいよー。

月って、何かそういう不思議な現象を呼び起こす力みたいなものがあるようにも思えるな。『世にも奇妙な物語』で実写化したら面白そう。

【月景石】
夢のような現のような。どちらが本当の居場所なのか、何を守っていけばいいのか、読みながら何だかずっと心細かった。

語り口のせいなのか、読んでいると眠くなってしまって何度か寝落ちつつ読了(笑)。

でも、世界の雰囲気はとても好きだった。異界の様子やイシダキ同士の関係性、不文律。ないのはわかっていても、ありそうに思えて。

血なまぐさい描写もあったけれど、表現や言い回しが好み。ゆっくり丁寧に味わいながら読みたいなあと思った作品。マンガやアニメになっても楽しそう。

【残月記】
表題作なのに、この作品が一番ページ数あるのに、まったくハマらなかった!
100ページ近くは頑張って読んだものの、残り半分を読み切れる気がせず。ところどころ拾い読みして、あとは断念してしまった。

あまりにも記録っぽいから楽しめなかったのかな。闘士の話のあたりから読めなくなった。月昴者の話は興味深かったので、残念。

「コンビニ人間」を読みました

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読みました。

「殺人出産」を読んだ時に、このひとの作品は好きな気がするからもっと読みたいなと思ったんだけど、やっぱりそうだった。好き。

まず、恵子のこどもの頃のエピソードからやられてしまった。独特な感性を持つこの女性は、この先どういう風に生きていくんだろうかと気になった。

平均的な常識や感性を持ち『普通』の行動をとれる人が、「人間」として認められる。そうでない人は奇異な目で見られ、矯正されたり排除されたりする。
これは現実でもそうだなあと思う。みんな、どこかしら調整して「人間」の範囲内に収まるレベルで活動している感じする。そうできない人は、苦しんでしまう世界。

恵子も白羽さんも言動が極端だから、周りが何かと治そうとしてくる。世間に適応しようと努力したり、うまくやれなくて苦悩したり、逃げたくなったり、そういうところはとても人間味があると思うけれど、それで良しとはならないんだから世知辛い世の中だよねー。

コンビニは接客が伴うので店員という役割を演じることが求められるし、マニュアルもしっかりしている。恵子みたいな人には最適なのかも。

恵子が他のひとを観察して考える内容や、実践してみる内容に共感を覚えた。私もちょっとやってることあるなと思った。


面白かった。似たような説明が何度か出てくるのは気になったものの、とても興味深く読んだ。


すごく余談だけれど、置いてある本のカバーを見てダンナさんが「魔貫光殺砲があるよ!」と叫んだ。右上に、ドラゴンボールに出てくる魔貫光殺砲の絵があるらしい。わざわざ検索までして元絵を見せてくれたら、本当にそうだった。まんまマンガから切り貼りした感じ。
このカバー作品は金氏さんという方の、「溶け出す都市、空白の森」より「Tower」というものらしい。調べると、この方は切り貼りや寄せ集め、コラージュを手法としているみたい。
著作権あるものでも切り貼りならOKなのかなー?