頭の中のあかない引き出し

毎日ちょっぴりシアワセを

「悪徳の輪舞曲(ロンド)」を読みました

中山七里さんの「悪徳の輪舞曲」を読みました。

御子柴礼司シリーズ4作目。

今度の容疑者も驚きだった。試練だ。

今回ばかりは弁護にとっかかりがなく、ちっとも突破口を見つけられそうにない。流石に負けちゃうのでは?と思いハラハラしながら読んだ。

今までは、御子柴が「とうとう見つけた」と思うなど、これだキーなんだなとわかる描写があったんだけど、今回はサラッといつの間にか。
第三回公判はほとんど勝ち目なく臨んだと思っていたら、そうじゃなかったので少し驚いた。ホッとはしたけども。法廷での御子柴の説明を聞いて、あの時に見つけてたのかーと思う感じだった。

御子柴の、身内に対しての感情が何とも複雑。無いようでいて、そうではなさそう。ほかの人とのやり取りを見ていくと、御子柴自身も意識できていない感覚っていうのが奥底にあるのかもなと思わされた。

御子柴の贖罪は一生続くとは言え、酷な裁判ばかり。特に今回は辛かったな。最後の郁美の話も、御子柴にとってはかなりキツかったのでは。
倫子に対してちょっと気持ちを覗かせてしまうところも、何だかいたたまれない気持ちになった。

「恩讐の鎮魂曲」を読みました

中山七里さんの「恩讐の鎮魂曲(レクイエム」を読みました。

御子柴礼司シリーズ3作目。

今作も面白かったー。
まさかあの人を弁護することになるなんて、と驚いた。なかなか御子柴の思惑通りに事が進まないところから、徐々に突破口を見つけていく展開にドキドキしてしまった。

物語序盤の旅客船が沈没するシーンは、セウォル号沈没事故を彷彿とさせる内容。割と最近の事故って思っていたけど、もう8年も前なのね。

ちょっと偶然が多くあり過ぎには感じたものの、ストーリーが面白かったのでそれほど気にならず。御子柴の人間味がところどころ出てきていてよかった。最後もいい。

それにしても教官、めちゃ頑固! (笑) もう最後は『汲んであげてー!』と思いながら読んでた。こういう人に出会えたから今の御子柴が出来上がったとも言えるだろうけど。

「昨日の海は」を読みました

近藤史恵さんの「昨日の海は」を読みました。

四国の南側、海に面した「磯丿森」という小さな町が舞台。高校生の光介は田舎を退屈に感じ、大学では四国を出ようと考えている。

そんな光介の日々に訪れた、数々の変化。伯母と従姉妹との同居、シャッターの絵、祖父母の心中の真相。

日常を描いているようなテンポながら、いろいろ珍しいことが起こるので飽きなかった。

最後にはみんな心境に変化があったり、成長が見えたり、謎が解明できたり、読後感は悪くない。でも、読みながら興奮するとか読み終えてからしみじみ思い返すとかいうことはなく、読んだらおしまいって感じもしたかな。

「回転晩餐会」を読みました

一穂ミチさんの「回転晩餐会」を読みました。

スモールワールズ刊行記念〈特別ショートストーリー〉、だそう。

7ページちょっとのお話。でもこの短い中にもやっぱり驚くところがあって、切ないところがあって、読み終えたあとにはしばらく思い返してしまう。

「スモールワールズ」と通じるものを感じたな。

「スモールワールズ」を読みました

一穂ミチさんの「スモールワールズ」を読みました。

ネオンテトラ、魔王の帰還、ピクニック、花うた、愛を適量、式日、の6篇。

これはねーー。好きだな。味わい深くてじわじわ心に残るストーリーばかり。展開がジェットコースターってわけではないし、どちらかと言えば静かに進むんだけど、何だかどんどん読んでしまった。読後も余韻でページをパラパラしちゃう。怖い。切ない。

すべての物語に、驚きがあった。展開に驚いたり、別のお話とのつながりに驚いたり。面白かった。

ひとつひとつのお話は短いけれど、どの登場人物たちのことも好きになった。みんなちょっといびつというか、スマートじゃないというか。自分の心を持て余していたり、もがいたりしている感じはあるんだけど。そこがいいのかな。

「あの日、君は何をした」を読みました

まさきとしかさんの「あの日、君は何をした」を読みました。

彼がどうして死ななくてはならなかったのか、あのとき何をしていたのか、気になってほとんど一気に読み終えた。

登場人物の感情の動きが丁寧に描かれているので、それぞれの思いに入りやすかった。大切な人を亡くしたあとの描写はつらかったな。いづみの心情も沙良の気持ちも、そうなるだろうなというのが読んでいて納得できてしまった。

第二章、まったく違う物語が始まったのかと思うほど第一章とは関連ないところで話が進むのだけれど、後半ですべてが繋がっていくのが気持ち良かった。いろいろな人の思惑が重なることで、思いもかけない事件が生まれたり事態が複雑になっていたり。面白かった。

ラストは、少し救い。ハッピーエンドってわけではないけど、モヤモヤが残るような嫌な終わり方ではない。その後のエピローグ的な部分が始まった時には、さっきのとこで終わりで良いのでは?と思ったのだけど、あってよかった。動機が補強されたし、救いにつながる部分の説得力にもなるなと思った。

まさきとしかさん、名前の印象で男性かなと思っていたのだけれど(たぶん まさき に引っ張られた 笑)、子に対する母親の視点がとてもリアルだったので、女性なのかなと思い直した。若しくは子を持つ母に丁寧な取材をしたとか。

三ツ矢と岳斗のコンビ、良かった。それぞれの事情も少し書かれていたから愛着が湧いちゃった。

「殺した夫が帰ってきました」を読みました

桜井美奈さんの「殺した夫が帰ってきました」を読みました。

5年前に夫を殺した茉菜。上京して仕事に忙しい日常を送っていたのに、ある日、死んだはずの夫が「ただいま」と帰ってくる。

先が気になる展開でどんどん読めるし、からくりは意外で面白かった。

でも、ちょっとわかりにくいところが多かった気がする。

和希が帰ってこなかった日の翌朝、帰ってこないことは決めていたことなのか偶然なのかと茉菜が考えていた部分。昨日の時点で友人宅に泊まると聞いていたのに、偶然帰ってこないって何だろ?と思ってしまった。

本当に偶然この日に友人と約束をしていたのか、帰ると都合が悪いから急遽、帰らないように計画したのか、そもそも友人と会っていないのか、そのへんを考えてたってことなのかな。わかりづらかった。

会話でも、セリフの意図がよくつかめないことが2度ほどあった。

失言に気づいたあと、「ゴメン! そうじゃないの。そういうことじゃなくて、私はただ…!」と言っていた場面もそう。相手も「わかってる。言われても仕方がないよね」と返しているのだけれど、具体的にどの部分をなぜ失言と感じているのかがわからなかった。

私にとっては、補完しながら読む必要がある文章の書き方だったかな。こまかい部分で何度か引っかかってしまった。読み手もわかっているって前提で登場人物たちのセリフや表情が描かれているように感じた。だから何だか、物語に没頭して入り込むというより、出来上がっている物語を聞いているって感覚で読んでた。結果、どの人にもイマイチ感情移入できないまま終わってしまった。

展開は面白かったんだけども!