頭の中のあかない引き出し

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「床屋さんへちょっと」を読みました

山本幸久さんの「床屋さんへちょっと」を読みました。

 

床屋さんへちょっと (集英社文庫)

床屋さんへちょっと (集英社文庫)

  • 作者:山本 幸久
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: 文庫
 

 

連作長編。9つのお話が入っている。
ひとつの話ごとに、時間が過去に戻る。前に読んだこれとは関係ない2冊も時間が遡っていくところがあったので、あれ?また?と思ってしまった。
でもこの手法自体は割と好き。前のあれはここからこうなったんだーと知るのが楽しい。

毎回、床屋さんがちらりと出てくる。ちょっと無理にでも床屋さんを絡めてきているのかな、なんて思う部分もあった。

勇が年齢に対して大人すぎるのと、登場人物たちの会話がたまに不自然なのとが気になった。こんな話し方はしないだろうなとか、こんなやり取りはしないよね、とか。

どの章も最後はちょっといい風に終わるので悪い感じはしないのだけれど、腹立たしいイヤなひとが出てきたり、登場人物がイヤな思いをしたりするので、読んでいる最中の気分はあまり晴れやかではなかった。タイトルから、何となく終始ほのぼのなストーリーをイメージしていたので意外だった。

途中、少し退屈しながら読み進めてしまったものの、後半の「床屋さんへちょっと」は良かった。集大成って感じで。まあ、ここでもイヤなひとが出てくるのであまり穏やかには読めなかったんだけど。

通して読むと、ひとりの男の生き様や家族の絆が見えてきて、あたたかい気持ちになった。もっと全体的に穏やかでもいいのになとも思ってしまうけれど、いろいろなことがあったからこその最後の展開なんだろうなとも思う。