「老後の資金がありません」を読みました
柿谷美雨さんの「老後の資金がありません」を読みました。
身近でありながらよく知らないこと、わかっていてもうまくやれないことを書くのが上手な作者さんだなあと思う。この作品を含めてまだ3作しか知らないけれど、そう感じた。
主人公のお金が減っていく一方なのがつらい。老後に向けての漠然とした不安や、もう無理という絶望感。主人公の篤子とそう年齢が違わない自分には容易に想像できるし、それだけに読んでいて堪らない気持ちになった。
途中、胸がモワモワしてつらいくらいだったけれど、先が気になって読まずにはいられなかった。
家族との関係、親戚との関係、友人との関係、自分にも当てはまるものがありそうで落ち着かない気持ちになったりも。
途中、小説らしい突飛な展開にはなったけれど、全体的には現実を突きつけられるストーリーだった。
いい感じにお金を貯めたいという気持ちと、お金なくたって何とかなるじゃんという気持ち、その両方がぐわぐわ迫ってきて変な高揚感で読了。何だか励まされて、実用書でも読んだのかなって読後感。
いやー…面白かった。
面白かったというか、いい本を読んだ。こういう感じの小説って、初めてかもしれない。